2024年6月5日に、厚生労働省から「令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」が公表されました。
ふだん、少子化に歯止めをかけるためのこども子育て政策の強化や、そのための育児環境の改善のための法整備などに意識が向いているところですが、せっかくその基礎になる統計の結果が公表されたので、今日は、その内容を確認していきたいと思います。
調査期間は令和5年1月1日から12月31日です。
人口動態統計は国の基幹統計で、市町村から保健所・都道府県を経由して国に報告されるものです。
出生数・合計特殊出生率
最初に、「合計特殊出生率」とは、「その年次(今回は令和5年)の15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性がその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子ども数に相当する」(厚生労働省)というものです。
図1のとおり、出生数は昭和48(1973) 年の約209万2千人の後は一貫して減少していて、令和5(2023) 年は約72万7千人になりました。これは、昭和48(1973) 年に比べて65%の減少です。平成27(2015) 年の出生数は100万5千人余でしたが、その翌年から100万人を下回るだけでなく、毎年3~6%程度ずつ少なくなっています。
また、合計特殊出生率は平成17(2005) 年に1.26になった後、平成27(2015) 年の1.45まで徐々に回復する傾向でしたが、その後は低下が続き、令和5(2023) 年は1.20となりました。
ちょうど今日(2024年6月20日)、都知事選挙が告示となり、その中で東京都の合計特殊出生率が0.99であり、それに対する政策が競われています。国の政策、地域の政策を考える上で、大切な数字です。
(グラフは、令和5年人口動態統計月報年計からの抜粋)
婚姻数
次に婚姻数です。出生数の低下は婚姻数の低下と関係するわけですので、当然、婚姻数も低下しています。
昭和47(1972) 年に最多婚姻数を記録しています。この時が約110万件でしたが、令和5(2023) 年は約47万5千件で、昭和47(1972) 年の43%の水準です。人口千人当たりの件数も3.9で、最高だった昭和22(1947) 年の33%の水準です。
(グラフは、令和5年人口動態統計月報年計からの抜粋)
死亡数・平均寿命・健康寿命
死亡数は、昭和41(1966) 年の67万人余を最低値として、それ以後は一貫して増加しており、令和5(2023) 年には157万6千人になりました。これは昭和41(1966) 年の2.35倍です。また、人口千人当たりの死亡数も13.0になっています。高齢化に伴い、75歳以上で死亡する人が増加しています。
また、出生数と死亡数の差である自然増減数は△84万 8659 人(727,277-1,575,936)で、17年連続で減少しています。
(グラフは、令和5年人口動態統計月報年計からの抜粋)
人生100年時代とは
さて、近年、「人生100年時代をどう生きるか」とか、「人生100年時代にあっては職業に就く時間も伸びる」とか言われます。
次の表1と表2をご覧ください。これは、厚生労働省の令和4年簡易生命表からの抜粋です。令和4年の日本の平均寿命は、男性が81.05年、女性が87.09年であり、まだ100歳には到達していません。
しかし、国立社会保障・人口問題研究所が令和5年8月31日に公表した「日本の将来推計人口」によると、2067年には100歳以上の人口が50万人に達するとされています。
また、平均余命は、医療技術の進歩等に伴い今後も伸びることが期待されますし、その意味では、「人生100年時代」とは、社会全体に起こる長寿命化の中で、個人が、これまでの時代よりも長い人生をどのように自分らしく生きていくかを考えるきっかけとなる言葉と理解するのが良いのでしょう。この時、できるだけ健康寿命を長くしたいですね。
ちなみに、健康寿命とは、健康な状態で生活することが期待される平均期間を表す指標です。平均寿命という概念だけでなく、今では、この健康寿命も大切な概念です。より長い人生において、いかにして、自分自身の健康寿命を延ばしていくかも、私たちそれぞれにとって大切な命題です。
高齢者雇用確保法
さて、そうした人生100年時代に向けた法制度の一つが「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」による70歳までの就業支援措置です。
生産年齢人口の減少に伴い、社会全体に人手不足感が強くなっています。その中で、「令和3年版 高齢社会白書」によると、「令和2年の労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)を見ると、65~69歳では51.0%、70~74歳では33.1%となっており、いずれも平成17年以降、上昇傾向である。」とされています。
こうしたことも背景となったのでしょう、ご承知のとおり、2021(令和3)年4月1日から、事業主に、65歳までの雇用確保義務 + 70歳までの就業確保(努力義務) を内容とする改正高年齢者雇用確保法が施行されています。
<対象となる事業主>
• 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
• 65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。) を導入している事業主
<対象となる措置> 次の①~⑤のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるよう努める必要があります。
① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
※ ④、⑤については過半数労働組合等の同意を得た上で、措置を導入する必要があります(労働 者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、そして労働者の過半数を代表する 労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の同意が必要です。)。
多くの企業において自社の実情に合わせて適切な措置を選択し実施していくことで、人生100年時代を見据え、高齢者の就労を支援し活躍の場を広げるとともに、技術・技能の承継への対処などにも役立つものとなることが期待されます。
離婚数
これまでの最多離婚件数は、平成14(2002)年の約29万件で、令和5年(2023) 年が約18万4千件なので、ピークと時の63%に減少しています。人口千人当たりでも1.52となっています。
(グラフは、令和5年人口動態統計月報年計からの抜粋)
最後に私の思い出話
今から30年ほど前、私はある保健所にいて、管内市町村からの人口動態統計の元データの提出を受けて内容を点検し、必要があれば提出元の市町村に照会し修正する仕事をしていました。当時は、1件ずつOCR帳票といわれる紙に手書きでデータが書かれていました。最終的には、国(当時は厚生省)において光学読取装置でデータ化していくわけですが、毎月毎月、出生、死亡、結婚、離婚のすべてについて、1枚ずつ、帳票の中でデータの不整合がないかを目で確認していました。