労災保険法について【4】

労災保険法

今回からは、労災保険法の業務災害に対する給付等について、主なところをまとめてみようと思います。

全体像

保険給付の種類は、負傷、疾病又は障害に対するものとして、①療養補償給付、②休業補償給付、③傷病補償年金、④介護保障給付、⑤障害補償給付があり、死亡に関するものとして⑥遺族補償給付と⑦葬祭料があります。

このほかに、特別支給年金がありますが、これは社会復帰促進等事業に分類されるものです。ただ、ここでは、給付の全体像が見える方がよいので、これらをまとめて整理していこうと思います。

療養補償給付

療養補償給付は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合に支給されるものです(通勤災害による場合は「療養給付」、複数業務要因災害による場合は「複数事業労働者療養給付」と名前が変わります。)が、原則は、現物給付としての「療養の給付」で、その範囲は、次の項目ごとに政府が必要と認めるものに限るとしています。

ア 診察

イ 薬剤又は治療材料の支給

ウ 処置、手術その他の治療

エ 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護

オ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

カ 移送

この規定によって、被災した労働者は、労災指定病院等において無料で診察等の療養を受けること(現物給付)ができる。

ただ、労災指定病院等に行くことができない場合には、療養の給付を受けることができません。その場合には、いったん治療費の全額を自身で支払った後、後日、償還払いを受けることとなります。いずれの場合にも、所轄労働基準監督署長への請求が必要です。また、給付の期間は、治癒又は死亡によって療養の必要がなくなるまでです。

休業補償給付・休業特別支給金

休業補償給付

「休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない」場合に、労働者の請求に基づいて、通算3日の待期期間の後の4日目から、原則として休業している間、支給されます。支給額は、「一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額」(労災保険法第14条第1項)です。

「賃金を受けない日」は、全部労働不能な場合だけでなく一部労働不能な場合も含みます。例えば、数時間だけ労働ができて、給付基礎日額の20%の金額(「A」という。)が支払われた場合、給付基礎日額からAを差し引いた後の金額の60%に相当する金額が休業補償給付として支給されます。

「給付基礎日額」とは、保険給付することの原因となった日以前3か月間を計算対象にして算出した平均賃金です。

また、休業補償給付は、療養開始後1年6か月を経過した日又は同日以後において、負傷・疾病が治癒せず、かつ傷害等級第1級から第3級に該当する場合は、その支給が打ち切られ、傷病補償年金の支給に代わります。

なお、通勤災害による場合には「休業給付」、複数業務要因災害による場合は「複数事業労働者休業給付」となりますが、内容は同じですので、読み替えてください。

休業特別支給金

特別支給金の1つです。保険給付である休業補償給付とは別物ですが、同時に支給申請しなければなりません。

休業特別支給金は、「療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から当該労働者に対し、その申請に基づいて支給」されるもので、「その額は、一日につき休業給付基礎日額(略)の百分の二十に相当する額」です(労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条)。

つまり、休業補償給付と休業特別支給金を合わせて、一日につき休業給付基礎日額の100分の80に相当する金額の支給を受けることができます。

この回は、以上です。

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